戦争が終わって70年
この国には また戦争を始めたい人たちがいる
それは お金のため プライドのため アメリカやさまざまの関係のため
わたしには少し 理解しがたいことだけれど
人の命や生活を守ろうとしてやっているのではない ことだけはわかる
わたしの実家は百姓で
野菜をたくさんつくっている
休みに帰ると
この夏の暑さと日照りと草とのたたかいで 父も母も やられっちまって
地面に這いつくばりながら 砂埃にまみれながら
なんとか生きているという有り様
野菜たちはそれでも美しく美味しく
こんな暑さの中でも 実をつけて
キュウリはみずみずしく トマトは酸味を持ち 塩をかけるだけでいける
ナスは黒光り 終わりかけの茗荷は花をつけて
野菜たちは命をつなぐ糧として 食卓に並ぶ
わたしはスーパーで売られている製品を見ても
その裏にある悲喜こもごもの物語を知らない
よその国の誰かが泣きながらつくっているものかも知れない
スーパーで命のやり取りを感じることはなかなかに難しい
畑のなかには生き死にがあって
育てている野菜だけでなくて
虫カエル蛇鳥けものたち 雑草やらきのこやら
みんな必死に生きるため 日々 格闘 していて
百姓も 一緒になって格闘しながら
わたしたちが食べるものを取り出すために ある種の搾取もしている
汗水垂らして産み出されるものが
効率的であるとか 経済的であるとか
そういう物差しで測ること自体 あまり意味のないことだと思えて
泥にまみれながら 毎日の天気に一喜一憂しながら
昨日は恵みの雨が降った
と安堵する
このか細くて確かな健全さを わたしは信じている
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